244 研究領域の現状
山 儀 恵(准教授) (2014 年 6 月 1 日着任)
A -1) 専門領域:有機合成化学
A -2) 研究課題:
a) プロトンを触媒とする不斉骨格転位反応 b) 水素結合を鍵とする不斉分子触媒の設計・開発 c) ハロゲン結合供与体触媒の設計・開発と有機分子変換
A -3) 研究活動の概略と主な成果
a) トリフルオロ酢酸による 1,2,2- 置換ブテニルアミンの 1,3- アルキル移動反応に成功した。特に,1位の炭素上が光学 的に純粋なブテニルアミンを用いた場合に良好な不斉転写率でプレニルアミンが得られることを見出した。本成果は, 不斉 1,3- アルキル移動反応に成功した世界初の例である。
b) C1対称型のキラルビスリン酸触媒を設計・開発した。特に,2つのリン酸基間の水素結合が動的軸不斉を制御する ことを明らかにした。また,電子求引性置換基の導入が,2つのリン酸基間の水素結合の強さと方向性を強化し,触 媒活性の向上と不斉反応場の識別を可能にすることを見出した。
c) ペンタフルオロヨードベンゼンが,イソキノリンとアリルシラトランとのアリル化反応の触媒として機能することを 見出した。本成果は,ハロゲン結合供与体が有機分子変換の触媒として機能することを示唆する重要な知見である。
B -4) 招待講演
椴山儀恵 , 「ブレンステッド酸触媒の設計と反応開発」, 第94日本化学会春季年会特別企画「進化する有機分子触媒」, 名古 屋大東山キャンパス, 名古屋 , 2014年 3月.
椴山儀恵 , 「水素原子・ハロゲン原子が創り出す不斉空間・不斉反応」, 平成26年度若手研究者のためのセミナー , 東京大 学大学院薬学系研究科薬学講堂 , 東京 , 2014年 11月.
B -6) 受賞,表彰
鳴海智裕 , 第2回国際会議(兼)第7回有機触媒シンポジウムポスター賞 (2014). 椴山儀恵 , 有機合成化学協会セントラル硝子研究企画賞平成26年度 (2014). 椴山儀恵 , T hieme C hemistry J ournals A ward (2008).
椴山儀恵 , Damon R unyon Cancer R esearch F oundation Post Doctoral R esearch F ellowship (2005). 椴山儀恵 , A bbott L aboratories Graduate F ellowship (2005).
椴山儀恵 , T he E lizabeth R . Norton Prize for E xcellence in R esearch in C hemistry (2003).
研究領域の現状 245 B -10) 競争的資金
科研費基盤研究 ( C ) , 「有機分子アリル化剤の開発を基軸とする革新的不斉有機分子触媒反応の開拓」, 椴山儀恵 (2011年 –2013年 ).
科研費若手研究 (B), 「ペルフルオロフェニル基の特性を利用した不斉有機酸触媒の開発とアリル化反応への応用」, 椴山儀恵 (2009年 –2010 年 ).
科研費特定領域研究「協奏機能触媒」, 「π - アリル・0価鉄複合体—キラルブレンステッド酸触媒による新規アリル化反応の 開発」, 椴山儀恵 (2008年 –2009年 ).
科研費若手研究(スタートアップ)「酵素模倣型キラル求核触媒の設計およ, び不斉反応の探索」, 椴山儀恵 (2007年 –2008年 ). 公益信託林女性自然科学者研究助成基金 , 「アゾール/グアニジン2成分系キラル求核触媒の設計開発および不斉反応の 探索」, 椴山儀恵 (2007年 –2008年 ).
住友財団基礎化学研究助成 , 「アザ - コープ転位を基盤とする触媒的不斉炭素−炭素結合形成反応の開発」, 椴山儀恵 (2007年 ). 東北大学理学研究科若手奨励研究基金 , 「アザ - コープ転位を基盤とする触媒的不斉アリル化反応の開発」, 椴山儀恵 (2007年 ). 分子系高次構造体化学国際教育研究拠点若手奨励費研究 , 「高次構造アルカロイドの合成を指向した鍵中間体ピロリジンの 触媒的不斉合成反応の開発」, 椴山儀恵 (2007年 ).
C ) 研究活動の課題と展望
地球上に生存する生命を特徴付ける性質のひとつがキラリティーである。ほとんど全ての生体系は,本来的にキラルであり エナンチオマー的に純粋である。このことは,物質のキラリティーが至るところで私たちの日常に浸透している所以である。 私たちの社会に欠かすことのできない物質・材料にキラリティーを組み入れること,それを可能にする一連の方法論を開発す ることは,次世代の純粋化学と応用化学の両面,そして材料科学において,極めて大きな意味をもつ。
当グループでは,キラル分子を供給する方法論の開拓とその確立を目指し,不斉分子触媒の設計・合成と触媒的不斉合成 反応の開発を進めている。これまでに,不斉空間の構築ならびに不斉反応において「金属−配位子錯結合」よりも弱い相互 作用である「水素結合」や「ハロゲン結合」の潜在的有用性を明らかにしつつある。水素結合やハロゲン結合の「強さ」と「方 向性」を利用する戦略を不斉分子触媒・不斉合成反応の開発において確立することを目標に,引き続き研究を遂行する。将 来的には,機能性物質合成としてのキラル化学からキラル分子の振る舞いを明らかにするキラル分子科学への応用展開を目 指したい。